泉のマーケティング解説ブログ
2025年08月
2025.08.12
駅改札の動きから読み解く立地戦略(ご近所マーケティング応用編)
「駅」は地図上の"点"ではありません。それは、人の暮らしと仕事が交差するリアルな観察ポイントです。
特に注目すべきは、改札の出入り動線。
ここにこそ、地域の“暮らし”と“働き”のバランスが表れます。
ご近所マーケティングの応用編では、この駅の使われ方から、店舗の立地戦略や販促導線のヒントを読み解いていきます。
改札の動きで見える「駅の性格」
駅は、一見するとただの交通機関ですが、
その改札の出入りの傾向を見れば、「暮らしの流れ」が見えてきます。
改札の動き
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駅の性格
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推定される商圏タイプ
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朝に入る人が多い
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地元住民が多く利用
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住宅地型(地元密着・暮らし系業種が有利)
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朝に出る人が多い
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外部から通勤者が来る
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就業地型(オフィス街・ビジネスパーソン向け業種が有利)
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チェックポイント
•駅前での人流観察
•改札口の流れ(朝・昼・夕で変化)
•昼夜人口データとの照合
数値データで補強する視点
現地観察に加えて、数値データでも駅の性格を掴めます。
•周辺500mの住民世帯数
•同エリアの就業者数/事業所数
•昼夜間人口比率
•学校・保育園の数(通学利用の有無)
•大型オフィス・官公庁の有無
特に「昼人口>夜人口」の駅は、就業地型の傾向が強いです。
富士そばに学ぶ「立地眼」

駅前立地の代表格、富士そば。
その出店戦略には、ヒントが詰まっています。
- 富士そばは住宅地には基本出店しない
- 主な顧客は「通勤途中のビジネスパーソン」
- 短時間・高回転の立ち食い業態は、住宅地ニーズとミスマッチ
『駅前に富士そばがある』=『その駅は“通勤中の通過点”』と判断できる目安に。
ご近所マーケティングへの応用
「駅の性格を知ること」は、そのまま販促戦略に活かせます。
駅の性格
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マーケティング戦略
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住宅地型
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暮らし密着型の導線設計(夕方・週末に強い販促)
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就業地型
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昼休み・スキマ時間での利用導線を設計(即時性・高効率がカギ)
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また、『駅前の“商店街の性格”や“口コミキーワード”』も大きな手がかりになります。
実践チェックシート(簡易版)
観点 | チェック内容 | メモ |
---|---|---|
改札動線 | 朝の時間帯に入る?出る? | [ ] |
昼夜人口差 | 昼人口 > 夜人口なら就業地型 | [ ] |
富士そば | 駅前にある?ない? | [ ] |
商店街の性格 | 地元密着?通過型? | [ ] |
口コミキーワード | 通勤途中・在宅勤務などの言葉が出るか? | [ ] |
まとめ
<駅前立地を「人の動線」として観察する>
ご近所マーケティングの真骨頂は、現地での気づきを、戦略に転換する力にあります。
地図上では見えない「暮らしの流れ」は、改札の動きにこそ表れます。
ぜひあなたのお店の周辺駅でも、改札の動きを観察してみてください。
“地域の気持ちがわかるマーケティング”は、現場で磨かれるのです。
2025.08.11
これからのコンビニは「個店の戦略」が鍵になる
近年、スーパー各社が中規模店にシフトし、惣菜や店内調理で力をつける中、コンビニ各社の苦戦が目立つようになってきました。
特に「価格が高い」「おにぎりや弁当が魅力を失った」という声が消費者の中でも多く聞かれます。
これは、店内調理のスーパーと、工場チルド配送のコンビニの構造的な違いが露呈している結果です。
これは、店内調理のスーパーと、工場チルド配送のコンビニの構造的な違いが露呈している結果です。
では、コンビニはこのまま沈んでいくしかないのでしょうか?
いいえ、生き残る道は、確実にあります。
その鍵は、“誰に・何を・どこで届けるか”というマーケティングの原点に立ち返ること。
そして、現場の一店舗一店舗が主役になることです。
コンビニは「一番近い便利」の再定義から始めよ
スーパーは「家族のために買いに行く場所」。一方コンビニは「自分のために買う場所」とされてきました。
でも、その使われ方は本当に固定されたものではありません。
例えば、半径350m圏内の住民が「普段使い」に変われば、コンビニの立ち位置も変わるのです。
その証拠が、富士市三ッ倉店の事例です。
ご近所マーケティングの成果(富士市三ッ倉店)
商圏人口
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350m圏内、約250世帯
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施策
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廃棄を出さない商品の告知・告知エリアの最適化
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結果
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2024年1年間で 3,650人 の客数増
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2025年も引き続き、1日平均 30人増 を維持中
この結果は偶然ではありません。
商圏を分析し、「近くにいるが来ていない人」に向けて戦略的にアプローチしたことで生まれた成果です。
本部主導ではなく“個店の戦略”が活きる時代へ

この取り組みには、本部の全国一律戦略ではなく、店主の主体性が不可欠です。
一見難しく思えるかもしれませんが、セブン-イレブンには他チェーンにない強みがあります。
それは、オーナーに主体性がある文化が残っていることです。
だからこそ、全店でなくてもいい。1店からでも取り組める。
それが、他チェーンとの差別化になり、これからの「強い店」になっていきます。
個店の時代 問われるのは“半径350mの顧客への解像度”

商圏分析はセブン-イレブンが出店時に徹底して行ってきた手法です。
でも、それを運営に活かしている店舗はほとんどありません。
お店の5分圏内には、まだ来ていない人がたくさんいます。
そこに対し、「あなたのための便利」を届けるための戦略が、ご近所マーケティングです。
まとめ
本部の仕組みに頼る時代は終わりました。
これからの主役は、現場で“考えて動く店”です。
ご近所マーケティングは、
地域に生きるお店が、自分の力で繁盛を作っていくための仕組みです。
1店舗ずつ、日本の商売に元氣を取り戻していきましょう。
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